ひとことで言うとジーンズ(英: jeans)は、デニムという生地で作ったパンツの名前とされます。日本ではジーパン、Gパンとも呼ばれます。名前の「ジーンズ」は、もとはパンツではなく布の名前だったとされます。
この記事で分かること
テーマ: パンツ
ジーンズ、ジーパン、Gパン。同じパンツに、いくつもの呼び名があります。似た言葉のデニムは、パンツではなく生地の名前とされます。
名前の「ジーンズ」のほうも、昔は布の名前として使われていました。明治の日本語にも、綿の布の名前として出てきます。
では、その布の名前はどこから来て、ジーパンの「ジー」は何を指すのでしょうか。
ジーンズとは? ジーパン・デニムとの違い
デニムは生地の名前で、ジーンズはその生地で作ったパンツの名前とされます。ジーパン(Gパン)は、ジーンズを日本で縮めた呼び方とされます。
布の表に斜めの筋が出る織り方を、綾織り(ツイル)といいます。デニムは、縦に通す糸(経糸)に染めた糸、横に通す糸(緯糸)に白い糸を使った綾織りの生地とされます。
つまり、「デニム」は布の名前、「ジーンズ」「ジーパン」「Gパン」はその布で作ったパンツの名前、という分け方です。
ジーンズの色が青いわけや、デニムとダンガリー・シャンブレーの違いは、デニムの記事にまとめています。
詳しく見る:デニムとジーンズの分け方
「ジーンズ」は、もとは布の名前だった
「ジーンズ」は、もとはパンツではなく布の名前だったとされます。明治35年(1902年)の日本の政府の告知でも、「ジーンス」は綿の布の品名でした。
1902年、清国(いまの中国)が輸入品にかける税の表で、「ジーンス」は綿布の品名の1つでした。漂白していない布(生地)と、漂白した白い布(晒白)があり、幅31インチで長さ30ヤードまでと40ヤードまでに分けて税が決められていました。
幅と長さで区切る品なので、この「ジーンス」はパンツではなく布の名前です。表は清国の税の表を日本語にしたもので、日本の輸入品の表ではありません。
ここがポイント
明治の日本語でも、「ジーンス」は布の名前として書かれていました。
さかのぼると1759年、北米の農園からロンドンへの注文書でも、夏の上っ張り用に「目の粗いジーンズ」が40ヤード頼まれていました。ヤードで数える注文なので、これも布の名前です。
作業ズボンだったジーンズが、作業の外で着る服として広まり始めたのは、1930年代とされます。
「布の名前が、いつのまにかパンツの名前になる。服も言葉も、よく着込まれると形が変わっていくんだよねぇ」
ジーン(布)とは
布の名前としての「ジーン(jean)」が指した布は、時代と場所で違いました。1917年ごろ中国の税関で扱われた「Grey Jeans」は、綿だけで綾に織った、漂白していない布でした。
1907年ごろの米国のジーンは、綿の経糸と毛くずの緯糸で織る、暗い灰黒色の布でした。いまの青いジーンズとは、色が違います。
詳しく見る:1902年の表、1839年のズボン、言葉の例
「ジーン」が布の名前でパンツの名前ではなかったこと、作業ズボンが作業の外で着る服になり始めたのが1930年代だったことは、どちらも別々の2点の資料で一致します[3][4]。
1902年10月4日の外務省の告示は、日本とほかの6か国の委員が、清国の委員と清国の輸入税率の改定を取り決めたことを知らせるものです。綿布類の段に「ジーンス(生地又ハ晒白)」があり、長さ30ヤードまでと40ヤードまで(幅はどちらも31インチ)の2つに分かれます[5]。
1917年ごろの「Grey Jeans」は、綿だけで三つ綾(綾織りの組み方の1つ)に織った布で、幅は28インチ以下から31インチ以上、1反の長さは30〜40ヤードでした。Grey は、漂白していない織り上がりのままの意味です[6]。
1907年ごろの米国のジーンは、オーバーオール(作業ズボン)をはかない力仕事の人の、既製のズボンに主に使われました。そのズボンは「ケンタッキー・ジーン」と呼ばれました[7]。
1759年9月20日、ジョージ・ワシントンはロンドンの商会への注文書に、農園の奴隷の身分の人たちの夏の上っ張り(フロック)用として「目の粗いジーンズかファスチアン(綿・羊毛・絹を混ぜた布)」40ヤードを書きました[8]。
1839年には、「blue jeans」の布で作ったズボン(pantaloons)がありました。イリノイ州の保安官の告示で、拘留された黒人の男性の持ち物に挙がっています。告示は、奴隷制の下で拘留した男女について、持ち主に名乗り出るよう求めるものでした[9]。
日本語でズボンや服の意味の「ジーンズ」の例として挙げられているのは1956年の本、「ジーパン」の例は1958年の小説です。どちらも、その年に言葉が生まれたという意味ではありません[10]。
詳しく見る:布の名前からパンツの名前へ(年表7行)
名前の出どころは、ジェノバとハエンの2説
布の名前「ジーン」の出どころは、資料によって、イタリアの港町ジェノバと、スペインの町ハエンに分かれます。どちらが正しいかは、いまの資料では決められません。
ジェノバ説は、ジェノバで作られた丈夫な布(ファスチアン)が、産地の名前から jean と呼ばれた、という説です。フランス語の「ジェノバのファスチアン」が元だ、とも言われます。
一方で、ジーンの名はスペインの町ハエン(Jaén)から来た、という説もあります。19世紀の英国と米国では、こちらが一般的な考えだったとする資料もあります。
| 説 | この説をとる資料 |
|---|---|
| ジェノバ(イタリアの港町) | いまの文化史や語源の資料 |
| ハエン(スペインの町) | 19世紀の英国と米国の生地の資料 |
ここがポイント
ジーンの名の出どころは、ジェノバ説だけではありません。
2つの説は、時代の違う資料にそれぞれ出てきます。編集部としては、どちらかに決めず、2説を並べておきます。
詳しく見る:ジェノバ説とハエン説の中身
ジェノバで作られたファスチアン(綿・羊毛・絹を混ぜた布)が、産地の名から jean と呼ばれた、という説があります[3]。
jean は「綾織りの綿布」の意味で、フランス語の「ジェノバのファスチアン」から来た、という説もあります[11]。
ジーンの名は「スペインの町ハエンから来たと一般に考えられている」とする資料は、1882年のロンドンのものと、1892年の米国のものの2点です[12][13]。
ハエン説をとりつつ、中世の文書に出る「Jeane」をジェノバのこととし、1577年と1622年の家の記録の jean を挙げる資料もあります[12]。
「ジーン」を、町の名ではなく綾織りの意味とする資料もあります[1]。
ジーパン・Gパンの「ジー」は何?
ジーパンは、英語の jeans(ジーンズ)と pants(パンツ)を縮めた、日本で作られた言い方とされます。「Gパン」とも書きます。
「ジーパンもGパンも、日本で縮めた呼び名とされているんだよねぇ。呼びやすい名前は、仕立て直さなくても長持ちするのさ」
つまり「ジー」はジーンズの「ジー」、「パン」はパンツの「パン」で、英語をそのまま持ってきたのではなく日本で縮めて作った呼び方とされます。
アメリカ兵(GI)がはいていたパンツだから「Gパン」、という話もありますが、確かめられる資料は見つかっていません(編集部調べ、2026年10月)。
探したのは、国語辞典と百科事典あわせて5種、手元の参考書5冊、検索の上位に出る記事18本です。
「ジーパン」の言葉の例としては、1958年の小説の「ジーパンとジャンパーのいでたちで」という一文が挙げられています。
詳しく見る:辞書でのジーパン・Gパンと、GI 説を探した範囲
前ポケットの中の小さいポケットは何?
前ポケットに付いた小さなポケットは、時計ポケット(コインポケットとも)と呼ばれます。
1942年の米国の戦時の規則も、作業ズボンに付けてよいポケットを数えるとき、「時計」のポケットを1つと数えていました。
時計ポケットがいつ付いたかは、資料によって1873年と1890年に分かれ、どちらとも決められません。
ポケットの角を留める金属の鋲(リベット)や、戦時のジーンズの話は、リーバイス501の「大戦モデル」の記事にまとめています。
詳しく見る:時計ポケットの呼び名と、付いた年
英語では watch pocket と呼ばれ、前の小さなポケットのことだ、という説明があります。コインポケット、ウォッチポケットとも呼ばれます[16]。
パンツの前の小さなポケットをフォブ(ウォッチ)ポケットと呼び、時計を入れるための所とする説明もあります[1]。
1942年8月の米国の戦時の規則は、作業ズボンのポケットを、前2・後ろ2・定規1・時計1までとしました[17]。
時計ポケットが付いた年は、1873年とする資料[18]と、1890年とする資料[3]に分かれます。
2つの資料は出どころが同じ見込みが高く、会社の初期の記録は1906年の地震と火災で失われた、とも言われます。そのため、どちらとも決めていません[3][18]。
よくある質問
Q. なぜ「ジーンズ」は複数形なの?
A. 1759年の布の注文でも、すでに s の付いた「Jeans」の形でした。布の名前の時から、s 付きの形がありました。19世紀の米国では、男物の服地の jeans はふつう複数形で使う、という説もあります。
Q. ジーンズはリーバイスが発明したの?
A. 1873年に登録された、ポケットの口をリベットで留めるズボンの特許の発明者は、ジェイコブ・W・デイビス1人です。権利は本人とリーバイ・ストラウス社に譲られていました。
ジーンズは発明されたのではなく、少しずつ形になった、という見方もあります。
Q. パンツはいつから「ジーンズ」と呼ばれた?
A. リーバイス社は、501を1960年まで、広告や包装で「overalls」(オーバーオール。腰までの作業ズボンの昔の呼び名)と呼んでいた、としています。
戦前の米国では、子ども用を「ジーンズ」、大人用を「オーバーオール」と呼び分けていた、という説もあります。
Q. ジーンズはなぜ青いの?
A. 生地のデニムが、縦に通す糸(経糸)を染めて織る布だからとされます。経糸はインディゴ(藍)で染める、という説明もあります。くわしくはデニムの記事にまとめています。
関連語
もっと詳しく: リーバイス501の「大戦モデル」は特別か/デニムとは?
参考にした資料(20点)
- [1]高村是州『アイテム 歴史 スタイル 専門用語 デザイン すべてがイラストでわかる ファッション事典』日本文芸社, 2026
- [2]暮らしの図鑑編集部 編『暮らしの図鑑 布』翔泳社, 2019
- [3]James Sullivan, Jeans: A Cultural History of an American Icon, Gotham Books, 2006
- [4]濱田雅子『アメリカ服飾社会史 重版』PUBFUN, 2022
- [5]大蔵省印刷局「官報 第5777号」1902
- [6]A. E. Blanco, Piece Goods Manual, Statistical Department of the Inspectorate General of Customs(上海), 1917
- [7]Frank P. Bennett & Co., A Cotton Fabrics Glossary, F.P. Bennett, c1907
- [8]George Washington「Enclosure: Invoice to Robert Cary & Company, 20 September 1759」Founders Online, National Archives
- [9]The Philanthropist(シンシナティ), 1839
- [10]「ジーンズ」「ジーパン」『精選版 日本国語大辞典』小学館(コトバンク)
- [11]Douglas Harper「jean (n.)」Online Etymology Dictionary
- [12]S. William Beck, The Draper’s Dictionary, The Warehousemen & Drapers’ Journal Office, 1882
- [13]Cole, A Complete Dictionary of Dry Goods, 1892
- [14]「Gパン」『デジタル大辞泉』小学館(コトバンク)
- [15]「ジーパン」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン(コトバンク)
- [16]Tracey Panek「Our Fab Favorites…」Levi Strauss & Co., 2019
- [17]War Production Board「General Limitation Order L-181(Men’s Work Clothing)」Federal Register, Vol.7, No.157, 1942
- [18]Levi Strauss & Co.「History of the Levi’s 501 Jeans」2006
- [19]Jacob W. Davis, US Patent No. 139,121「Improvement in Fastening Pocket-Openings」, 1873
- [20]青田充弘『WAR DENIM 神格化された「大戦モデル」を解読する』立東舎, 2025
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